原発事故被災動物と環境研究会

Messageメッセージ

東日本大震災・東電原発事故から14年が経ちました


 私たちは、二つの大陸プレートとさらに二つの海洋プレートがぶつかり合う場所にできた日本列島に住んでいます。海に囲まれ、火山のめぐみも多く、農業や漁業に適した国ですが、地震、台風、大雨などによる自然災害から逃げることができない運命です。そして残念なことに、時々それらを忘れてしまい災害が起きて大慌てするということを繰り返しています。
 東日本大震災から14年が経過しました。
大きな災害からの復興には時間がかかりますが、東日本大震災の特別な問題は、原子力災害が複合していることです。護岸工事や道路の整備は進みましたが、少なくとも事故を起こした原発周辺の農業、畜産業、漁業は完全な復興にはほど遠い状況が続いています。
 私たち、「一般社団法人 原発事故被災動物と環境研究会」は、福島第一原発事故後に、旧警戒区域内の牛の命を無駄に絶つことができない、と継続飼育していた畜産農家を支援したことが活動の始まりです。
 牛たちは、既に畜産動物としての価値はなくなっていますが、農家の方々の要望もあって、牛たちの健康を維持しながら、研究者らが様々の観点から研究情報を取得してきました。マウスなどの実験動物と違って、牛の放射線影響はよくわかっていません。しかし、まだ除染が済んでいない場所で飼育されている牛たちの被ばく線量や健康状態を継続観察することによって、過去に例のない研究データを蓄積しています。
 一方、牛の飼育を継続している農家の方々は畜産収入を得られません。対象の牛たちは、高齢になってはいるものの自由でストレスが少ない環境で毎日元気に過ごしていますが、この牛たちの餌と医療を確保できているのは、多くの方々のご支援があってのことです。
 継続してご寄付して下さる方々、クラウドファンディングでご協力くださった方々、ボランティアの協力者の方々などのご協力のおかげをもちまして、この活動は続けられています。
 また、今年度に特筆すべきは、「原発被災者の支援を目的としたサンエス基金」からのご支援によって、牛たちは冬季の飼料と医療を確保することができました。
 被災から14年目となる2025年3月に、私たちの活動に対しご支援くださっている方々に対し、改めて御礼の気持ちを表します。
 本当にありがとうございます。また、引き続きのご支援をお願い申し上げます。

 一般社団法人 原発被災動物と環境研究会
 代表理事 伊藤伸彦
 


農家の想い


 早いもので、3月11日で東日本大震災と原発事故から14年が過ぎました。
 原発事故時には緊急に避難したため、飼っていた牛の生死も分からず半分諦めていました。しかし、牛たちは牧場の柵などをやぶり脱走し生き延びていたことがわかり、安堵したことを覚えています。
 これで生き延びることが出来たと思っていたところ、放れ牛を無くし柵などに入れキチンと管理しなければ、すべて殺処分の対象になるといわれたので、放れ牛を探し集めて今日まで管理を続けています。震災前に飼育していた牛を集めて飼い始めた当初は、ここまでやれるとは思いもよりませんでした。
 震災前は粗飼料をほぼ100%自給していたのですが、原発事故後、牧場が帰還困難区域となり、区域の立入時間にも制限がかかったため、牧草の作付が出来なくなりエサの確保が難しくなってしまいました。その様な時に当研究会からエサの確保をしてもらい、また同じ牛飼いの方々からのご協力もあり、今まで飼い続けることが出来ました。
 現在は避難区域が解除され制限なく立ち入ることが出来るようになったので、100%粗飼料を自給出来るようになりました。しかしそれでもこの牛たちは、繁殖も移動も販売も出来ないため、牛たちからの収入はありません。この牛たちを飼い続けるためには年数百万円の経費が必要となり、今でも手出しが続いています。
 いつまでこの牛を飼い続けることが出来るかわかりませんが、皆々様方の御指導と御協力を賜りながら牛飼いを継続しようと思っています。これからも暖かく見守っていただきますようお願いいたします。

 大熊町 池田牧場 池田光秀
 


あの日から14年目の春


 大震災・原発事故から14年になりますが、自身の心の中では今でも、避難指示に従うこと無く不安のなか牛たちの世話をしていた状況が鮮明に蘇ります。
 当時、私の管理する集落内には自分の所有を含め約90頭をこえる牛が生存しており、振り返り思うと大変な数であったことに驚きます。
 これまでの年月の経過と共に牛たちも高齢のため、また事故や疾病等により死亡することもあり、現在の数が約30頭弱となりましたが、生きている限り飼い続ける覚悟を決めてはおります。しかし、頑張ろうと思いつつも悲しくなることもあります。
 頭数は少なくなりましたが、変わりなく面倒を見ておりますので、これまで同様に皆様方のご支援、ご協力をお願いいたします。

追伸:これから小丸行政区の除染が14年目の春にして実施される予定です(特定帰還居住区域に指定)。行政区の復旧・復興は、まだまだ先の見えない状況ですが、心が折れないように、牛と共に、当研究会の協力も得ながら頑張りますので、重ねてご協力をお願い申し上げます。

 浪江町 小丸共同牧場 渡部典一
 


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Newsお知らせ

2025/02/25
トップページ メッセージ「東日本大震災・東電原発事故から14年が経ちました」を更新しました。
2024/03/07
5月25日(土)岩手大学教育学部北桐ホールにてシンポジウムを開催します。
2024/03/07
トップページ メッセージ「東日本大震災から13年が経ちました」を更新しました。
2024/01/01
新年のご挨拶を更新しました。
2023/05/15
5月20日(土)シンポジウム「福島県 浜通りの畜産復興に向けて」の申込期限を5月18日まで延長いたしました。
2023/04/03
5月20日(土)コラッセふくしま多目的ホールにてシンポジウム「福島県 浜通りの畜産復興に向けて」を開催します。
2023/03/08
「震災と原発事故から12年の節目によせて」メッセージページを更新しました。
2023/01/17
「原発被災から12年、畜産復興に向けて、希望、課題」メッセージページを更新しました。
2023/01/17
「学術論文」ページの情報を更新しました。
2022/06/20
クラウドファンデイングは第一目標金額を達成して終了しました。ご支援ありがとうございました。
2022/04/19
5月28日(土)東京大学弥生講堂にて「被ばく牛と生きる」上映会とシンポジウムを開催します。
2022/04/04
4月11日(月)12時から 牛たちの飼育費等を募るためクラウドファンディングを開始いたします。
2022/03/11
「東日本大震災から11年目を迎えて」メッセージページを更新しました。
2022/02/22
3月6日(日)早朝4時30分 テレビ朝日の震災特番で研究会(池田牧場)が取り上げられます。
2021/12/17
「メディア」のページ情報を更新しました。
2021/11/08
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2021/10/11
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